経営理念が会社を変える

 

 連載 チャンスを活かせ!−よみがえる中小企業  第4回

 

 経営理念が会社を変える

あるニット製造業者の挑戦

 

(有)トスコム代表取締役

中小企業診断士

E–mail:fwge1417@infoweb.ne.jp

 

   経営理念の重要性を!

 20年間経営コンサルタントとして多くの中小企業の経営をみてきたが,経営理念をキチンと掲げ,社員にまで浸透させている会社をほとんど見たことがない。経営理念はあっても人の借りものであったり,掲げているだけで実態とはかけ離れた経営姿勢であったりというところが多い。 

しかし,かくいう筆者も会社員時代には,その重要性を認識していなかった。独立して初めての指導先(自動販売機によるカップ式のコーヒーサービス会社)で,事業継続の有無の判断を問われた。

 継続すべきと判断した段階で,経営理念を作るよう提言すると,社長はどのようにしたらよいかわからないというので,社長の本事業に対する考えや思い入れ,将来設計などを聞いて筆者が作り上げた。しかし,1年ほど経つと,社長は「先生,この理念はどうも私の考えとちがうような気がする」といい出したのである。

そこで,社長の思うことを文章にしてみなさい。他人が作ったものは所詮借りもの,本当に自分が思うことを書き出してごらんなさいと提言を行った。

 

 

そうして生み出された理念が「自動販売機で本当においしいコーヒーを提供する」だった。この言葉を社内に貼り出し,社長は自分のこの事業にかける気持ちを社員に説いたのであるが,このときからこの会社は大きく変わりだしたのである。

経営理念1つが社長を変える,会社を変えるということを体験し,その重要性をあらためて実感した経験であった。

■ 経営理念とは

  経営理念とは,「企業固有の新たな価値を創造するために,どのような方向に向かって進むかという意思と行動を示す指針」であると『戦略シナリオ思考と技術』(斎藤嘉則著・東洋経済新報社)に述べられている。また同書では,経営理念の3要素には基本理念(目的・存在価値基準),ビジョン(将来のゴール),行動規範(行動時の具体的な価値基準)の3つがあり,この基本理念からビジョンに向かう過程を埋めるのが経営戦略だとも述べている。

 事実,先の自動販売機のコーヒーサービス会社は,本物のおいしいコーヒーを自動販売機で提供するためにはどうしなくてはいけないかを考えることになるわけである。そうした模索から,自動販売機メーカーの機械はコーヒー抽出温度が不足していることを発見し,独自の改造を施すことにつながった。

また,原材料のコーヒー豆についても商社から豆を取り寄せ,ドイツ製の小型焙煎機で実験を繰り返し,これだという味を確認してから量産用の焙煎業者に豆の選定,焼き加減について仕様をだす念の入れ方であった(キーコーヒー,アートコーヒー,UCCなどの提供する原料は,一般喫茶店向けにはよいかもしれないが,自動販売機の性能とのマッチングにおいては不十分であった)。

商品アイテムも,消費者の購買動機に合ったブレンドで朝のコーヒー,午後のコーヒーというようなネーミングで販売した。今でこそ缶コーヒーではあたりまえのネーミングだが,17〜18年前には画期的であった。

 

当時は,コーヒーはモカ,キリマン,ブルーマウンテン等々の名で販売するのが常識だったのである。

 また,サービス体制も鮮度維持の観点から従来のサービス方法を変更。情報化,マニュアル化を徹底し,従業員の評価システムも能力主義に変更することにより,コスト効率を上げることに成功したのであった。

 

 (以上は企業診断9月号からの抜粋です。「企業診断」本誌をご覧ください。)

TOPに戻る