土木建築業から住宅フォーム業への進出

 

よみがえる中小企業  連載 第10回

星 16: チャンスを活かせ

 

 

土木建築業から住宅リフォーム業への進出

既存事業からの脱却〜新分野進出の成功事例

蒲 康裕 

中小企業診断士

E-Mail: fwna3109@mb.infoweb.ne.jp

 

 

 

1.住宅リフォーム市場規模の推移 

近年の建設業界は、建設投資の低迷に伴う受注の減少、利益率の低下により厳しい経営環境に直面している。このような中にあって、住宅リフォーム市場は堅調に推移している。 

 (財)住宅リフォーム・紛争処理支援センターで推計(図表−1)した住宅リフォームの市場規模は、平成14年(2002年)で5兆6,100億円、新設住宅に分類される増改築工事、リフォーム関連のインテリア商品等の売上高を合わせた広義のリフォーム市場は、7兆3,000億円に達している。13年前の平成元年(1989年)は3兆4,000億円(広義では5兆7,800億円)であることから、数字の上では13年間で1.6倍の規模に拡大した。しかし、ピーク時平成8年(1996年)の5兆7,400億円(広義では9兆600億円)に比べると2.5%の減少になっている。 

 平成年代に入ってからの住宅リフォーム市場規模は、平成8年までは順調に増加してきたが、長期化する経済不況の影響等により平成9年から前年を下回り、以降横ばいである。特に新設住宅の増築・改築工事[住宅着工統計上、「新設住宅(戸を形成するもの、例:流し台やトイレを設置して2世帯向けとした場合)」に区分される増築・改築]や増築・改築工事などの減少が目立っている。現在のリフォーム市場を支えているのは設備の改善等、比較的小規模な工事と推測できる。

テキスト ボックス: 図表1 住宅リフォームの市場規模
(財)住宅リフォーム・紛争処理支援センターで推計した住宅リフォームの市場規模は、2002年で5兆6,100億円、住宅リフォームを広義に捉えた金額で7兆3,100億円である。

注@ 推計した市場規模には、分譲マンションの大規模修繕等、共用部分のリフォーム、賃貸住宅所有者による賃貸住宅のリフォーム、外構等のエクステリア工事は含まれていない。
  A 「広義の市場規模」とは、住宅着工統計上「新設住宅」に計上される増築、改築工事と、エアコンや家具等のリフォームに関連する家庭用耐久消費財、インテリア商品等の購入費を含めた金額を言う。
  B 棒グラフは「狭義のリフォーム市場規模」、折れ線グラフは「広義のリフォーム市場規模」を表す。
  C 本市場規模は、「建築着工統計年報」(国土交通省)、「家計調査年報」(総務省)、「全国人口・世帯数・人口動態表」(総務省)等により、(財)住宅リフォーム・紛争処理支援センターが推計したものである。
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2.土木建築業から住宅リフォーム業への進出:k社の事例 

前述のような業界環境の中にあって、土木建築業K社のリフォーム業への新規参入例を紹介する。

【株式会社K社 企業概要】

● 資本金:35,750千円

● 全社売上高:30億円

● 従業員数:40名

● 業態:総合建設業

 

  @参入経緯

京都市に本社を置くK社は、昭和31年創業の、地域に密着した中堅建設業である。平成11年より、社内に専門部門を設けリフォーム事業に参入した。建築部門、土木部門の売上の減少が平成10年頃より見られたため、業容維持のために、新規事業の展開が必要とされたからである。

 建築部門においては、RC建築が主体であったが、少数ながら住宅の施工も発注者によっては対応していた。また、地域密着型企業として、営繕の仕事は多く手がけてきていた。この分野は事業というよりサービス業務として対応してきていたが、設計や施工に関するノウハウは、社内にあった。

そこで新規事業を考える際に、過去の住宅施工実績や営繕工事実績をもとに、リフォーム事業に取り組めるのではないかと考えて参入した。

  参入にあたってのポイントは、以下の意識を社内に徹底した。

 

@)リフォーム事業は建設業とは根本的に異なるサービス業であるという意識

A)過去の延長線上にある事業ではなく、専門部署、専任担当を配置して、

一つの事業として立ち上げるという意識

 *参入前・参入後の組織体制は図表―2参照

地域における顧客や信用を築いてきた資源を活かして、FCなどへの加入はせず、自社の経営資源(人材・ノウハウなど)を活かして事業を立ち上げることにした。参入に際しては商工団体の支援や外部コンサルタント(筆者)の指導を受けながら、自社独自で進めてきた。

 A現状

 3年を経過し、現在K社のリフォーム部門の現状は以下の通りである。

·           専任担当者 3名

·           リフォーム分野売上高:年間1億2千万円

·           年間受注件数 120

·           50万〜100万円未満が件数で全体の約50%

·           戸建て約80%、マンション約20%

·           新規顧客 約70%

 

 

事業部として、3年目にして単年度黒字を確保できるようになった。 

現在は、まだ新規顧客の割合が70%という高い比率にある。従って、K社のリフォーム事業は成長段階にあるといえる。大手リフォーム会社などの事例が示す、リフォーム事業が安定してくると言われる、顧客リピート率70%以上を目指して、京都市における顧客を創造している段階にある。そのために、アフターサービスとして、6ヵ月後、1年後、2年後の定期点検の実施も行っている。

 施工管理に関しては、30社程度の外注業者は協力的であり、品質管理も高いレベルを維持できている。しかしながら、建設業からの参入の場合は、外注業者の確保ができても、工事単価が異なるので、原価管理に課題を持つことが多い。K社においても、平均的な粗利益率は現在25%前後である。今後、大手リフォーム業者との競争激化も予想される中、原価管理は重要な経営課題である。

 建設業からの参入のもう一つの課題は営業力である。現在K社では、独自のアンケート方式による販売促進が効果を奏している。これは、地域に根ざす総合建設業としての知名度と信頼力を活かした活動といえる。

また、介護保険の活用については積極的にPRしており、この1年間で介護保険適用の工事も相当数の実績がある。 

B今後の展開

 K社においては、専門のショールームも設置し、地域密着型のリフォーム事業を推進していく予定である。そのために現在、プロモーション費用も年間300万円ほど使用している。地域における市場浸透率を高め、3年後には、2億5千万円を目指している。

※ 以降の内容は同友館『企業診断』2004.3月号 P106を

ご覧ください。

3.参入にあたっての留意点

4.戦略ドメインの明確化

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